木更津駅東口、喫茶店ラビン
わたしはラビンと聞くと暗殺されたイスラエルの首相の名前を思い出した。
アメリカ大統領の仲裁でパレスチナ解放軍のアラファトと握手をしている姿が頭に浮かぶ。
ラビンの店内を見ると80年代後半のバブル期の贅沢さを残しながら時が止まったような感覚になる。よく潰れないで残っていたなと感心する。
ようこそ龍宮城へ、とわたしはおどけた。ラビンにはダークウェブを通じて数人の若者とセツ子がいた。
「ぼくは『AKIRA』が好きなんだよ。あのバイクに乗ったりとか鉄男みたいになってみたいな」とレオと名乗る20代中頃から後半に見える黒髪に近いラテン系の若者が行った。
「あぁ、それならお安い御用だよ。東京の首都高を走ったりする設定でいいのかな。」とわたしはレオに確認をとる。それなら直ぐに準備できる。
「『めぞん一刻』のような生活をしたかったんだ。だけどあんな素敵な管理人さんはいないね。それにこんなことをいうとサイコだと思われるかもしれないけど『SAW』みたいなホラーを体験したいんだよ。」
おれは『13日の金曜日』のジェイソンでも御免だな、と心の中で呟く。
マイケルは金髪で青い目をしている。ゲルマン、アングロサクソン系なのだろう。
めぞん一刻はいいよね。あのシェアハウスのような生活がいいのかな。でもホラー系はちょっと時間がかかるかもしれない。
「サメがウヨウヨしているなかを泳ぐなんかどうかな。それならここでも準備できるんだけど」。わたしが代替案を出すが、いやそれは興味がない、との返事だった。
木更津はBOUSOUの管轄だが、横須賀のK-ismならできるかもしれない。
横須賀には富津の金谷からフェリーが出ている。乗船時間はたったの40分。
ここで取り敢えず体験した後に横須賀に行くのはどうかな。こちらから連絡しておくから。
レオは「それならぼくもマイケルといくよ」と目を輝かせた。好奇心が見えた。
「あそこは物騒だよ。気を付けていきなさい」とセツ子は険しい顔を浮かべ警告した。
横須賀には米軍基地がありリトルアメリカのようになっている。
レオは笑いながら「マダム、ぼくは南米で一番危険な都市からアメリカのマイアミに移住して生き抜いてきたんだぜ。心配しなく大丈夫だよ」とセツ子の肩を叩いた。